谷垣禎一前自民党総裁が、今回の総選挙の出馬を取りやめる意向を明らかにした。
頸髄を損傷する大怪我を負った影響で、まだ歩行がうまくいかないことから、政治活動に支障をきたすとの事で決断されたそうだ。
一部では政界引退の報も流れたが、それは誤報だった。
谷垣氏の身体の状態は良くなってきているそうで、産経新聞の取材によると、「谷垣氏が顧問を務める党内グループ『有隣会』幹部は『10月にも退院予定で政界復帰の機会を探るはずだったが、衆院解散の時期が早かった』と唇をかんだ。」との事だ。
自分が安倍晋三を嫌う理由は山ほどあるが、自民党が野党時代に谷垣総裁が盛り立てて、政権交替まであと一歩のところまで持っていったところで、トンビが油揚げを攫うように自民党総裁の座を奪ったことも、その理由の一つだ。
第一、その前の民主党政権への政権交代だって、元をたどれば第一次安倍政権が参院選に大敗し、ねじれ国会となった事がキッカケだ。その責任者が、よくもまあこのタイミングで総裁選に出ようと考えるものだと、すっかり呆れ果てたものだ。
また、その後、谷垣総裁は総裁選への出馬を断念され、安倍晋三は党員投票で石破氏に破れたものの、その後の議員投票に勝ち、自民党総裁となって今に至る。そんな経緯もあって、自分としては、安倍晋三に投じた自民党議員の人格にも大いに疑問を感じざるを得ないわけだ。
そして、この簒奪と言っても良い経緯で攫った総裁の座だが、総裁選の過程とその後のビジョンを称して、安倍晋三はこう言い放った。
「再チャレンジ」
絶句する薄ら寒さである。この時の谷垣前総裁の心中はどうだったのだろうか?。
その後、谷垣氏は断ればいいのに幹事長の座を引き受けた。野党総裁として汗をかき続けたにも関わらず、自民党が政権に返り咲いたてもまたもや党のために泥臭く汗をかけと、安倍晋三がそう命じたわけだ。そして自転車で事故を起こし、今に至るわけである。
ここまでの経緯がありながら、谷垣氏の復活を考えずに解散を選択した安倍晋三は、完全にサイコパスとしか言いようがない。総裁の座を奪っただけでなく、絶妙なタイミングで議員の椅子まで奪ったのである。
河野洋平、谷垣禎一。戦後の長い自民党の歴史の中で、野党総裁となったたった二人の人物である。そして、二人共総理大臣になっていない。
単なる野党第一党ではなく、政権与党から転落した党のトップとして、離れて行こうとする仲間たちを必死に食い止めながら、政権党へのカムバックという偉業を成し遂げ(あるいはその直前まで行った)たのである。
その二人が二人共、総理大臣になっていない。両方共、トンビに油揚げを攫われるように、総理の座を奪われたのである。
自民党は何と汗をかく人に冷たく、家柄や権謀術数でのし上がる有り様を良しとする政党だろう。こんな薄汚い権力の奪い合いを国民の前で平然と展開しながら、「再チャレンジ」などと言える精神の持ち主だけが、自民党の中では報われるということなのか。
そういう連中が作り上げる社会のデザインがどんな物になるのか、推して知るべしである。
そんな薄汚い自民党の中でも、谷垣禎一氏は好きな議員の一人だった。司法試験に何度も落ちた苦労人でもあり、市民的な感覚をちゃんと持ち合わせた議員だった。
また、谷垣氏は多摩川サイクリングロードのロードバイク乗りで、自分も当時はそうだったので、自分一人で勝手に親近感を持っていた。自分は下流の方にいたり、湘南の方に繰り出すことが多かったので、残念ながら羽村堰のあたりにいることが多い谷垣氏に出くわすことはなかった。*1
自転車で事故を起こした直後、家族に対して自転車を直すよう指示したという。この感覚は大変よくわかる。自転車乗りは転んだとき、自分の身体のことなどより、かわいい自転車の怪我の方がよほど心配になるものだ。その一報を受け、自分は氏の身体の具合が心配になった同時に、自転車乗りらしいその精神性に心の繋がりのようなものを感じた。また、復活はそう遠くないものと思っていた。自転車乗りに落車はつきものだ。自分はやったことはないが、長年自転車に乗っている人は、大体鎖骨を1回や2回は折っているものだ。
まさか、最初は頸椎損傷の重症を負っているとは思わなかったし、復帰にこれほどの時間がかかるとも思っていなかった。
何だか追悼文のような感傷をつらつら書き連ねてしまったが、谷垣氏はまだまだ政界復帰を狙っている。自民党総裁の座だって諦めていないはずだ。しっかりと身体を治して、政界に復帰してほしい。そして、現自民党総裁をはじめとして不真面目な連中ばかりの政界に、一喝をくれてやって欲しい。
谷垣氏のような真面目一徹な汗かき屋が復帰し、自民党総裁の座に返り咲き、総理となったときに初めて、自民党は再チャレンジの党と言える政党になるのではないか?
谷垣総裁の復活を、自民党の皆さんにも祈願していただきたい、そのように思うのである。
2017.09.21 追記
朝日も引退と書いてきたし、やはり引退なのだろうか? 完全にハッキリするまで、上記は残しておこうと思うが、これで引退ではあまりに寂しすぎる。
2017.09.25 追記
後援会長も引退と言っている以上、やはり引退ということらしい。
谷垣氏の政界での最後がこんなことになるなど、認めたくなかった。あまりに残念すぎる。
谷垣氏「これ以上、周りの人に迷惑をかけたくない。いい加減な形で国会議員を務めることはできない」と翻意せず。後継問題については「党に迷惑をかけるので、無条件でお願いしたい」と党に一任。
— にのうらさとこヾ(○'∀'○)ノ (@ameayunon) 2017年9月25日
誰からも必要とされていないのにゾロゾロ集まっている希望の党の先生方、聞いてます?(´・ω・`) https://t.co/CgcPhGMCLj
報われるべき人ほど報われず、ゴミみたいなやつだけ美味しい思いをする。ハハ。まるで日本みたいじゃないか。
— ボビー・ブラウン (@po_jama_people) 2017年9月25日
人の手柄をぶん取るやつの「再チャレンジ」は認められ、周囲に迷惑はかけられないと、日本人らしい実直な人柄を見せる者は栄光を得られない。それが「美しい国日本」なのである。
美しい国。この言葉を指して共産党の志位氏が「逆さから読めば『憎いし苦痛』」と揶揄した。だが、この言葉は揶揄ではなく、予言だったのだ。