一部の間で大変有名なツイッタラーであらせられる、ノイホイこと菅野完氏(以下、菅野氏)のTwitterアカウントが永久凍結された。
Twitterで名を起こし、テレビその他のメディアにも出演するようになり、政治家や政治団体の関係者にも認知されるようになった、言わばTwitter論壇成り上がり伝説の第一人者と言うべき人物である。
特に彼の代表的著作である「日本会議の研究」は、「日本会議」という政治団体を世間に大いに認知させ、「日本会議本」ブームの火付け役となった。*1
Wikiにも記載の通り、その数々の活動についての世評は、毀誉褒貶相半ばするといったところで、味方の数も敵の数も非常に多い。何しろTwitter上でもリアルの世界でも、彼独自の思想や正義感に裏打ちされた行動力やヒューマンスキルを武器に、あちこちで大変闘争的な振る舞いを見せてきた方である。
菅野氏のツイートには、アンチからのクソリプとファンからの応援リプなどが絶えずまとわりついていて、Twitter界の祟り神的な存在になっている。
で、今回の凍結について、「あいつが凍結されて清々する」という声もある一方で、菅野氏の論敵の側からも「削除の基準がよく分からず不気味である」との声も出てきている。
凍結された菅野氏本人は、「削除理由を開示せよ」とTwitter社にもとめている。
挙句菅野氏のファンの中からは、彼の政治的なスタンスや森友学園問題への取り組みなどから、「この凍結には政府が関与してるのでは?」という声まで出始めた。
Twitterにおいて、この間の「蚊を殺す」ツイートで凍結事件から時を置かずして、またもや「削除基準は?」問題が、しかも若干政治的な色彩すら帯びて再発したわけだ。
自分も安倍晋三を非常に嫌っているアカウントではあるが、左寄りなアカウントの一部が言う、政府の陰謀説には、可能性がゼロとまでは言わないが、正直あまり乗れない。話が突飛すぎるし、Twitterのアカウントを潰したところで、彼自身のWebサイトやFacebookのアカウントもあるし、そもそも菅野氏の活動の領域はオフライン上の方にだいぶ広がってきているので、公的な発言の機会を失うわけではないからだ。むしろツイ廃と言っても良かった彼がつぶやく機会を失ったことで、仕事をする時間が増えることを考えると、逆効果になる可能性すらある。いくらなんでもそんな効果の薄い事のために、民間企業に圧力をかけるなどというリスキーな事は、あの安倍政権とは言えやらないだろう。
また、そもそも菅野氏が凍結に値する発言をしているか否かといえば、少なくとも表面的に見れば、「死ね」「キチガイ」などの発言を相当数繰り返しているのは間違いないので、これらがTwitter社の基準に引っかかると言われれば確かに引っかかる。
一方で、このレベルの発言をしているアカウントは、思想の左右を問わず、そこら辺にいくらでも転がっているのがTwitterでもある。それ故、「なぜXXは凍結されないのにノイホイさんが!」との反応が広がり、偏った裁定が行われたのではないかとの不信感が醸成されているのだ。*2
菅野氏が求めるように、アカウント凍結の理由を一つ一つ本人に開示するようになると、Twitter社としては運営の負荷が耐えきれないものになるので、開示がなされないのかもしれない。何しろただでさえTwitter全体としては毎年赤字を垂れ流している状態で、いつ倒産してもおかしくない会社だ。
個人的にはこの凍結の理由や、もっと有害と思われるアカウントが生かされている理由についてTwitter社に是非語っていただきたいが、倒産寸前の会社がそのようなフレキシブルな対応をするのかと考えると、あまり期待できない気もする。また、運営費削減のために、今後も更に機械的な基準による削除が進むことだろう事を推測すると、謎の凍結は今後も増えるのではなかろうかと考えられる。
2006年にサービス提供を開始したTwitterも、「蚊を殺してアカウント凍結」の件や本件にも見られる、不信感を醸成するような運営の甘さなど見るにつけ、サービス提供から10年を超えて、色々と下り坂の兆候が出てきたのかもしれないと思わざるをえない。大体2chにしてもそうだが、10年を超えて上り坂を上り続けることのできているWebサービスなど殆どないのだ。
今回の凍結騒動が、日本における下り坂の始まりの象徴的な出来事として記憶されることがないよう、一人のTwitterユーザーとして祈らざるをえないし、そうならない為にも、今回はアカウント凍結の理由を何らかの形で提示すべきなのではないだろうか?
結論:祈ります。
*1:菅野氏の日本会議関連本は、自分も「日本会議の研究」と「日本会議をめぐる四つの対話」を持っている。読んでみて、大変強い取材力と人脈をお持ちの方だと感じた。また、政治に関係ないコラムとしては、「おっさん画報」を大変楽しく読ませて頂いている。多分政治の話にこだわらなくとも、コラムニストとして十分独り立ちして食べていけるだけの力量がある人なのだと感じている。
*2:特に、サイモン・ヴィーゼンタール・センターと殴り合いになりかけている高須克弥のアカウントとか、俺がもし経営者なら、アメリカ資本の企業として、経営判断として何が何でも叩き潰すと思うのだが、現実にはそうはなっていない。アメリカの本社にもそれなりに連絡は行っているだろうし、その辺は本社として一体どういう判断をしているのか、自分としても大変疑問がある。