雑記(主に政治や時事について)

日々の雑感。政治色が高い目。

加計学園ツイへの反論に対し、まとめて反論する

昨日このようなツイをしたところ

 

ネトウヨからのリプライが大量に飛んできている。いわゆる「プチ炎上」という状態である。夕方以降は友人との酒席もあり、朝までちゃんと通知欄を見ていなかったので、改めてスマホで見てびっくりである。

自分のTwitterはあまり人との会話を重視していないし、私生活も殆ど書いていないので、通知欄が汚れたところで大した影響はないのだが、それなりに反響があった嬉しさもあるので、この際まとめて反論しておきたい。

Twitterのリプライで反論しないのは、Twitterでは発言がどんどん流れてしまうので、過去ログを読まずに似たような指摘が来ると一々打ち返すのが面倒くさいのと、自分へのリプライの中にある共通の傾向についても整理して指摘しておきたいからである。

 

 

加計学園問題への自分の基本的見解

まず、私のざっくりした加計学園問題への考え方は下記の記事にも書いたとおりであり、そのベースは郷原氏のブログの内容である。

 

po-jama-people.hatenablog.com

 

nobuogohara.com

 

基本的な線をおさらいするとこういうことだ。

 

加計学園問題の中心

国家戦略特区承認の審査プロセスが、総理の個人的交友関係の為に歪められた疑義がある。

 

論点

  1. そもそも安倍首相の指示や意向による物だったことを立証できるのか?
  2. 利益相反になるのではないか?
  3. 安倍側が掲げる『獣医学部新設を50年門前払いし続けてきた、文科省の設定した規制のあり方自体が問題なのであって、文科省の反論など一顧だに値しない』という論点は妥当なのか?
  4. 加計学園問題に犯罪性はあるのか?

 

自分の見解

  1. 安倍首相に認めさせるのはまず無理だが、間接的な証拠などから推測するに、限りなく黒に近いグレー。
  2. ここに問題があるのは明らかだが、仮に安倍首相がここを認めても致命的な問題とはいえなかった。なのに強硬に問題を認めない旨の主張をすることで、火に油を注いだ。
  3. では閣議決定した石破4条件はなんだったのか? 石破4条件はむしろ獣医学部新設を検討する側にこそ挙証責任を求める内容なので、文科省に挙証責任を求めるのは論理として破綻している。
  4. 立証は難しいが、そもそも犯罪でなければ問題ではないということにはならない。

 

上記をベースに、飛んできたリプライの内容を整理し、反論をする。

 

指摘された内容と反論

指摘された内容と反論は下記の通り。

なお、指摘の原文は内容的に意味のない罵声や皮肉や嘲笑が混ざっているものが多数だが、それをそのまま載せてしまうと、「こういう発言をする奴の見解は一顧だにする価値はないだろう」という印象を読む人に与えてしまい、元の発言者に不利になると考えるので、罵声の類があれば表現は基本的に普通のものに直し、元のアカウントも載せないようにする。

また、私が酒席に参加した夕方以降のリプライをできるだけ抽出したのだが、抽出しきれていないものがもしあれば、教えて頂ければ、できるだけここに反応を書いておこうと思う。

 

指摘された内容

  1. 補助金は、誘致した今治市の積立金を中心に、愛媛県が追加で拠出して賄う予定なのに、市議会や県議会でなく、なぜ、国会で議論するのか?
  2. 「総理の友達だから認められた」は前川氏と君たちの勝手な思い込みであって、実際には安倍政権下でも5回も申請を却下されている。
  3. 選ばれなかった京都産業大学が「選考におかしな点はなかった」と言っているので問題ない。
  4. しっかり利益が出る、美味しい話しならば、他の大学が参入しないのはなぜか?
  5. 加計学園につぎ込まれる補助金は何人分もの生涯賃金に相当し、小さい問題ではないと自分が指摘したのに対し)加計学園が出来れば数百億円分の雇用が生まれる。
  6. 問題があるならとっくの昔に誰かが裁判で訴えているはずである。
  7. 前川は天下り斡旋という違法行為がバレてクビになった逆恨みから証言をしている。
  8. なにが利益相反に相当するというのか? 愛媛の畜産業は口蹄疫で苦しんだ過去があり、畜産の疫病のために獣医師を求めているのだが、獣医師会が己の利権死守のために、新規参入を拒んでいる。
  9. 石破が獣医師会の意向を受けて作った4条件を守らねばならない理由は何か?
  10. 加計学園の質疑の為に使われる審議時間の経費と生活に関わる審議案件が先送りされたりした際の経済的損失をどう考えているのか。

 

指摘に対する反論

  1. 愛媛県には国から地方交付税が交付されている。お金に色はついていないので、当然全国民の税金の問題となる。
  2. 文科省文書という間接的な証拠がある。文科省文書の内容を否定するような文書・資料は内閣府からは開示されていない。前川氏は「存在する」と言い、安倍内閣がずっと「存在しない」と言い続けていた文書が、調査により結局出てきた。それだけでも、前川氏の言うことにそれなりの信憑性があるといえるのは、客観的事実である。また、5回却下されたという話は、文科省としては却下し続けていたという話である。むしろ、それだけ却下されるような内容であるにも関わらず、安倍総理をトップとし、各担当大臣にすら意思決定に加わることのない「国家戦略特区」という仕組みにより、総理の意向が強く働き、強引に承認に向けられてしまっている。そしてその「意向」が総理の個人的交友関係に基づくものなのではないか? というのが本件の問題の根幹である。
  3. 京都産業大学は、国の認可のもと、私学助成も得て大学を運営している私立大学の立場である。国に対して反発するような発言をすると、今後の学校運営のマイナスになる可能性が考えられることから、京都産業大学がそのような見解を示すのは、至極合理的な判断である。また、そもそも京都産業大学がどういう見解を示しているのであれ、それは重要な事ではない。重要なのは「他大学が参入できないように、意図的に審査の条件を厳しくし、事実上加計学園しか通らないようにしたのではないか?」というのが、本件の疑惑の本筋である。京都産業大学は会見で、「国家戦略特区の実施主体として申請し、構想は準備できていたが、今年1月4日の告示で「平成30年4月の設置」が条件とされたために、それまでには設置認可の申請の準備ができないということで応募を断念した」と発言している。50年間新設されてこなかった獣医学部を、平成30年4月という超短期間で新設しなければならない合理的な理由はどこからも提示されていない。公募するのであれば、数校は手を挙げる状況にまで条件を緩めて、競争をさせるのが普通の考え方であり、合理的な理由以外の何らかの「力学」が働いたと考えるのが妥当である。
  4. 利益があると判断したので、京都産業大学が手を上げた。京都産業大学以外が手を挙げられなかったのは、公募期間が平成29年1月4日~11日という、わずか7日間(営業日にして5日間)しかなかったためである。この短すぎる公募期間も、石破4条件に挙げられた「全国的見地から検討を行う」という観点から明らかに矛盾する。初めから目をかけていたところ以外は落とすために設定した期間と見られてもおかしくはない。
  5. 地方振興や雇用増加を加計学園で行わなければならない必要性はない。本件はプロセスの正当性を問う話なので、全く論点がずれている。
  6. 被害を認知して訴えを起こす/起こさないという事と、実際の被害があったかは別の問題である。
  7. 単なる誹謗中傷であり、そう類推する根拠がない。また、前項2.に記載のとおり、前川が存在すると主張し、内閣が存在しないと主張した文科省文書は存在した。内閣が信用でき、前川が信用できない根拠はない。
  8. 国家戦略特区は担当大臣すら意思決定に加わることがなく、すべて安倍首相の判断によって決まる仕組みになっている。そして、加計氏と安倍首相は「腹心の友」である。少なくとも外形上、本件のような疑惑を避けることは不可能であり、この状態を利益相反というのは妥当としか言いようがない。また、今治市が長年獣医学部を求めていたことや、獣医師会が利権を守ろうとしているという話は、そもそも本件の問題とは何ら関係がない。本件では、加計学園を選んだプロセスが正当なものだったのかが問われている。その正当性の根拠に、「今治は長年頑張ってきたのだから」とか「岩盤規制だからとにかく壊さなければならない」という情緒的な判断が入る余地などありえない。あくまで、全国的な見地から日本国にとって最も利益になるようなプロセスを踏もうとしていたのか? ということが問題なのである。
  9. 石破4条件は、安倍首相も承認した閣議決定である。「加計学園問題追及法律家ネットワーク」のメンバーは、これまでに公開された議事録などを検討した結果、加計学園獣医学部の新設認可を決めるこれまでのプロセスで「石破4条件を検討した形跡がなかった」と指摘している。内閣法第4条には「内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする」とある。つまり、石破4条件を守らないのは、違法行為である。
  10. 他の審議も平行してやればよい。そもそも通常国会閉会後、臨時国会の要求を3ヶ月拒み続けた挙句、選挙まで実施したのは安倍首相である。

 

まだ指摘されていないが、やってきそうな他の反論

  1. 国家戦略特区制度が民主党時代にも存在して、加計学園獣医学部を推進に切り替えたのは民主党政権時代だ。
  2. 加計学園問題はまだ疑惑の段階である。証拠が十分でなく、疑惑の段階で問題があると騒ぎ立てるのは不当である。
  3. 加計学園問題は、法的問題がないので、そもそも問題ではない。

 

まだ指摘されていないが、やってきそうな他の反論への反論

  1. 国家戦略特区はアベノミクスの3本の柱の1つである「成長戦略」として掲げたものである。一方、民主党政権構造改革特区の枠組みで進めていた。そもそも構造改革特区では、関係省庁の長による同意が必要になるが、国家戦略特区は総理の専権で決めることが可能になっている。本件の問題は、加計学園の新設が認められること自体ではない。国家戦略特区という、総理の専権ですべて決められる仕組みを利用し、審議プロセスを捻じ曲げて承認させた疑いがある、という問題なのである。
  2. 疑惑があれば調べるのは当然である。「騒ぐのは不当だ」という見解は、そもそも疑義を呈することそのものを不当視する考えであり、理解の範疇を超えるものである。警察の捜査においても、すべての証拠が完全に集まるまで、逮捕・取り調べを行わないなどというのはありえない。逮捕・取り調べをするだけの根拠がある程度揃った段階で、逮捕状を請求し、容疑者を逮捕し、取り調べの過程で本当に犯人であるのかハッキリさせるのである。まして国会は、逮捕拘束されるわけでもない、オープンな議論の場である。「証拠もないのに犯人扱いか」などという見解は、まるで当たらないものである。
  3. まず、「指摘に対する反論」の項番9.に書いたとおり、石破4条件を検討していないのであれば、内閣法4条に反する疑いがある。また、この問題は「適法性」を問うているのではなく、「適切性」や「正当性」を問う話である。「適切性」や「正当性」はなくとも、「適法」であれば問題ないなどということは、「安倍ありき」の立場以外からは出てこない発想である。

 

自分へのリプライの中にある共通の傾向

数々のリプライを読み、共通の傾向を感じた。正直、日本国の劣化を深刻に受け止めなければならないレベルである。

 

問題の本質に対する理解を意図的に拒絶する態度

まず、どのリプライを見ても、何が問題視されているのかまるで理解していない。というか、理解を拒否しているような態度なのである。物事の全体像に対する理解が根本から違うため、はじめから話しにならないのである。

そして、加計学園承認の正当性の根拠についてネトウヨが一様に言うのは「今治が求めているのだから求めるようにしてやれ」だの「獣医師会の抵抗と総理は戦っているのだ」という、本件で求められる「正当性」とおおよそ関係のない話ばかりなのである。

 

加計問題よりXXX

「野党は生活のための審議をしろ」という話をよく聞く。だが、そもそもどんな政策にせよ、税金を基本的な原資としていることには変わりはない。そして、この加計学園問題はつまるところ税金の使途に関わる問題なのだから、生活のための政策の原資を守るために、一丁目一番地でやるべき問題であるはずだ。

税金の使途が「有効に使われるのか?」という観点から審議されず、「総理の御友人を優先しよう」という観点から審議されるようになったら、税金という貴重なリソースがどれだけ無駄に垂れ流されるか分かったものではない。それは、単に加計学園問題単体の問題ではなく、今後のすべての政策に関わる、内閣そのものの是非に関わる問題である。

加計学園で地域振興できる」だの「もっと他の審議に時間を使ったほうが有効である」といった話は、当たっていないばかりか、そもそも視野の狭い見方である。

我々の生活を守る政策の原資である税金。それが異常な理由で、今後も継続的に不当な使途に当てられる可能性があるのである。

 

「安倍ありき」から結論を出す

「問題の本質に対する理解を意図的に拒絶する態度」も、「加計問題よりXXX」も、根本的にはここから生じているものである。

安倍総理を擁護しなければならない」という、「安倍ありき」というところからすべての話を出発させるため、本件の問題の本質である、「正当なプロセスを意図的に逸脱し、総理の友人・関係者に有利に取り計らうように働きかけたのではないか?」という問題の本質から外れたところを躍起になって叩こうとする。

そもそも、そんなに安倍首相を躍起になって守ってどうするのだろうか? 「安倍ありき」なネトウヨたちは、加計学園問題のような話が浮上してしまうような意思決定プロセスを採用してしまう政府が、もっと重要な災害や安全保障上の危機管理をマトモにできると思っているのだろうか?

万能の人間などこの世にいない。だから意思決定のプロセスは、常に複数人の識者による、チェックアンドバランスの仕組みが欠かせないのである。そんなものは、普通の企業に勤めていて、稟議決定のプロセスなどに思いを致せばすぐわかる話である。

国家戦略特区という枠組みそのものが、そのチェックアンドバランスの仕組みを無視していると言えるし、挙句本件のような疑惑が出てしまうこと自体、安倍首相の統治に対する認識の欠如を物語るのである。そんな首相を、なぜそんなに躍起になって守ろうとするのか?

 

国家なければ安倍はないが、安倍はなくとも国家はあるのである。それともネトウヨたちにとっては、安倍なくして国家なしなのだろうか。

 

人間の精神の闇とは、なんとも測り難い。