当ブログとしては珍しくスポーツの話題だが、角界という所の異常さが際立っている内容なので、ちょっと注目してみた。
2017.11.18追記
2017.11.17段階での記事なので、公表されている事実関係がその後のものとだいぶ変わっています。
貴ノ岩が日馬富士に暴行されたのは10/26で、その後巡業に参加していたが、11/5から入院することとなった。
暴行の現場はモンゴル人力士の集まる会合の席で、白鵬、鶴竜の両横綱、関脇照ノ富士も同席していたようだ。
その会合の中で、貴ノ岩の言動に日馬富士が腹を立て、説教をすることとなった。説教の最中、貴ノ岩のスマートフォンが鳴り、操作をしたことに日馬富士が激昂した。日馬富士は貴ノ岩の頭をビール瓶で殴り、さらに馬乗りになって殴打を続けた。白鵬が静止しようとしたが、振り切って暴行を続けた、というのが、当時の状況のようだ。
公益財団法人の「日本相撲協会」が発表した怪我の状態は、「脳振盪(しんとう)、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋(ずがい)底骨折、髄液漏の疑いで全治2週間」というもので、診断書に嘘がないのであれば、ちょっとした怪我などという代物ではない。こんな物は一般社会では「半殺し」と呼ばれるような物であり、立派な「暴行傷害事件」である。脳へのダメージは時にしばらく時間が経ってから現れ、取り返しのつかない障害を抱えるケースさえある。貴ノ岩にはしっかりと養生をして頂きたい。
そして、当ブログでは、この事件をめぐる角界の動きの異様さや不可思議さを指摘したい。
上記記事から引用すると、暴行後の状況は次の通りだったという。
先月26日の鳥取巡業の前夜にあった暴行の後、被害者の貴ノ岩は、けがの理由を尋ねた師匠の貴乃花親方(元横綱)に「転んだ」と報告。母校である鳥取城北高の関係者と病院へ行っていた。このため、同親方は暴行の事実を知らず、その後のけいこを続けさせた、という。
実情を知った同親方が自ら被害届を鳥取県警に提出したのが10月29日。しかし、県警から報告を受けた協会の鏡山危機管理部長(元関脇多賀竜)が今月3日に電話で事情を聴いたところ、貴乃花親方は協会の巡業部長であるにもかかわらず、「よく分からない」と答え、被害届のことは報告しなかった。
一方、日馬富士の師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は3日の電話で初めて事情を知った。加害者である日馬富士からは何の報告も無かったようで、「知らなかった」と話したという。その後、事実を確認した同親方は貴乃花親方に電話と場所前の理事会などで計3度、謝っている。
……2段目以降の流れが、全くわけが分からない。被害者側である貴乃花親方は、被害届を出したにも関わらず、なぜ「よく分からない」などと答えたのか? 伊勢ケ浜親方は電話で初めて事情を知ったとのことだが、貴乃花親方からは何の話もなかったのか?
暴行傷害事件が起こっているのである。しかも頭蓋骨が骨折しているともなれば、相当な腫れが出ていたはずだ。どうやって貴ノ岩が巡業を続けられたのかもよく分からないが、もしそれほどの重傷が本当だったなら、この異様に遅い動きは何なのか?
一般的な会社組織であれば、県警からの連絡を受けた段階で、全社を挙げた大事になっているはずである。
そして、この事件を巡る話が、同席していた白鵬や、周りの人々から色々飛び出てくるが、どれも異様な色彩を放っている。
繰り返し書くが、診断書通りであれば、頭蓋骨骨折の重症である。半殺しである。貴ノ岩の言動がどうだったなどという話が、同席していた横綱や、元横綱から出てくる時点でありえない。言動に問題があれば、頭蓋骨が折れるまで殴って良いのか? 白鵬は、ビール瓶で殴っていない、馬乗りにはなっていないと言っているが、では診断書はどういうことなのか?
一方で、貴ノ岩は怪我後も巡業に参加し、白星まで上げていたという。頭蓋骨を骨折しながら、そんなことが可能なのだろうか?
極めつけは日馬富士自身が漏らしているという「引退だけは避けたい」という言だ。実際に本人が何処かでそう話しているのが映されたわけではないので、事実そう言ったとは断言できないが、事実なら開いた口が塞がらないとはこのことである。と言うか、暴行の事実を認めた以上、今この瞬間にも引退していなければおかしい話である。何しろ人を「半殺し」の目に合わせているのだから。
もう何もかも分からない。とにかくすべての登場人物の行動や言動に、不可思議さしかない。一つやそこら筋が通らない所があるのではなく、登場人物の言動と行動のすべてが、一般人の理から尽く外れているとしか言い様がないのだ。
このわけの分からなさの芯を成しているものを見出すとするなら、それは被害者自身も含めての「暴力に対する異様なほどの鷹揚さ・寛容さである」
相撲界では度々暴力事件が取り沙汰されている。特に07年の「かわいがり」事件は世間に大きなショックを与えた。
「かわいがり」などという言葉に象徴されるように、相撲界には暴力を鷹揚に受け止める風土があった。07年の事件後、再発防止策なども打たれたが、どうもその後も起こった様々な事件と、今回の事件の対応を見るにつけ、そもそも相撲界には暴力事件を瞬間的に大事と捉える風土がないようなのである。
暴力を鷹揚に捉え、時に必要なこととして寛容に捉えて良い職業など、国家による暴力装置(警察・軍隊)と、ヤクザに代表されるアウトロー以外にありえない。
まして、法によらない暴力が認められるのは、アウトローのみである。相撲界は長年暴力団との付き合いが指摘され、近年は反社との付き合いを断絶すると宣言したのだが、そもそも相撲界自体に「反社的価値観」が色濃く残っているのではないかと指摘されても仕方がないのではないだろうか?
冒頭に書いたが、日本相撲協会は、公益財団法人である。「反社的価値観」をもつ公益財団法人など、一体何のギャグだというのか?
公益認定取り消しが目の前に見えてきたことを、相撲協会の役員らははっきりと感じるべきである。
というか、今場所をスパッとこの瞬間に中止とされ、また事件の全容解明と関係者の処分が済むまで、全ての巡業を中止にされてもおかしくない、それほどの事態であると認識すべきだ。
2017.11.18 追記
17日の段階まで出ていた、頭蓋骨骨折や髄液漏といったショッキングな怪我の状態はすべて「疑い」であり、九州場所出場には問題がない、日馬富士はビール瓶でも殴っていないとのこと。なんだか全部の情報が逆転してしまっているが、不可解さは拭いきれない。
相撲協会から情報が発信されるのではなく、周囲のいろいろなところからポツポツと情報が出てくる、中心人物たちは皆だんまりを続ける、特に貴乃花親方は一言も言葉を発しない。
これでは何を信じてよいのかわからない。