1月26日、沖縄で相次ぐ米軍ヘリのトラブルに関し、志位和夫が国会で質問をしている際に、松本文明内閣府副大臣が「それで何人が死んだんだ」とヤジを飛ばした。同日、松本文明は責任を取り、内閣府副大臣を辞任した。
典型的な安倍物件
安倍晋三の人事の傾向として、それまでに起こしたトラブルや不祥事にかかわらず、一定の人物を非常に重用したり、擁護したりという傾向がある。稲田朋美しかり、麻生太郎然り、佐川宣寿然り。
この松本文明も典型的なそういう人事を受けた者である。
2013/9 | 第2次安倍内閣で総務大臣政務官兼内閣府大臣政務官に就任 |
2014/9 | 大臣規範違反疑惑と政治資金疑惑が浮上し更迭 |
2015/10 | 第3次安倍第1次改造内閣で内閣府副大臣に就任 |
2016/4 | 熊本地震の現地対策本部長に就任したが、熊本県庁と政府をつなぐテレビ会議での「おにぎり差し入れ要求」問題など様々な問題をおこし、5日間で酒井庸行に交代 |
2016/4 | 松本が代表を務める自民党東京都第7選挙区支部が、マンションの家賃として松本の妻に約10年間で計約2,000万円(6年間では計約1360万円)を支払っていたことが判明。 |
2016/8 | 内閣府副大臣を退任(更迭) |
2017/8 | 第3次安倍第3次改造内閣で再び内閣府副大臣に就任 |
2018/1 | 「それで何人死んだんだ」発言で内閣府副大臣を辞任 |
安倍晋三に初めて政務官として取り立ててもらって以来、1年に1回は問題を起こし、そのたびに要職から辞任をし、「ほとぼりも冷めただろ」とばかりに1年後にはまた要職に着く。そんなサイクルがひと目で見て取れる、実に笑える年表である。
第一次安倍政権の頃から「お友達内閣」という言葉がよく言われていた。本人のキャリアや適性より、情実を優先させて人事を行う様を表現したものだが、松本文明の内閣府副大臣就任をはじめとした人事も、典型的なそういう人事であった。
政治家の言葉
辞任に際し、毎日新聞によると、松本文明と安倍晋三は下記のような会話を交わしたようである。
松本氏は首相に「誤解を招く発言でご迷惑をかけている」と陳謝。首相は「この国が大変な時期なので緊張感を持って対応してもらわないと困る」と注意した。
この会話は一体何なのだろうか? 「それで何人死んだんだ」のどこに誤解の余地があるのだろうか?
上記の言葉の解釈は、「米軍ヘリが墜落して人が死んだのでないなら問題はない」以外にはありえない。誤解なのではない。ただ本音をハッキリと言っただけだ。そして、このような本音を持つ者に、日本人の生命と財産を守るための仕事である政治家など、絶対やらせてはいけないということもハッキリしている。
それに、安倍晋三に「ご迷惑をかけて」いるのではない。沖縄で米軍ヘリに不安を感じている人々を侮辱したのだ。安倍晋三との面会後にも記者団に「沖縄県民、国民の皆さんに迷惑をかけた」などと言っているが、迷惑どころの問題ではない。自分が主体的に、国会の場で、沖縄県民を侮辱したのだ。
そして、松本文明の発言に対して安倍晋三が言った「緊張感を持って対応してもらわないと困る」も意味がわからない。
松本文明が言ったのは誤解の余地のない言葉であり、本人の心の底から出た本音である。そして、それに対して安倍晋三の言った「緊張感を持って対応」というのは、「政治家はたとえ『日本人が墜落したヘリに当たって死ぬまではなんの問題もない』という本心があるにせよ、それを表に出さぬよう緊張して政治に対応しなければならない」という意味だろうか? それ以外の解釈など成り立たないのだが。*1
どんな組織であれ、人事の質からその組織の求めるものが見える。安倍晋三の人事からは、安倍晋三の求める人材が見える。このあまりに馬鹿馬鹿しい更迭劇を、過去の松本文明がどうだったのか、彼に対する安倍晋三の人事がどうだったのかも含めてよく考えてみるべきである。