太平記みたいな政局だな……。
— ボビー・ブラウン (@po_jama_people) 2017年9月27日
大楠公ポジも後醍醐ポジもいないけど。暗愚と野心家しかいない太平記。
— ボビー・ブラウン (@po_jama_people) 2017年9月27日
「太平記みたいな政局」と書いたのは、もちろんこの政局を褒め称えてのものではない。太平記を知らない人には、俺がこのクソ政局劇を「英雄たちの物語やー」と喜んでいるように見えてしまう気がしたので、一応書いておく。
太平記とは、鎌倉幕府の崩壊から南北朝成立を経て、2代将軍足利義詮の死までを描いた軍記物である。俺が「太平記みたい」と言ったのは、軍記としての太平記のようだというより、太平記に書かれた時代の史実みたいだと言っている。
この時代、一言で言うと、まさに今回の政局のように、「お前、絶対思いつきではじめただろう」としか思えない、裏切りや政局がひたすら横行していた。後世から見ると大変面白いのだが、当時の人からすると、たまった物じゃなかっただろう。
天皇(後醍醐)が全国に指示を出して幕府討伐の兵を起こさせるわ、そこに当時の幕府の実質的トップ(北条高時)から偏諱を受けた者(足利高氏→後の尊氏)まで乗っかって幕府を裏切るわ、幕府を倒したら今度は天皇の政治が最悪だわで、めちゃくちゃな展開が続く。そして、尊氏は後醍醐(諱は尊治)から偏諱を受けたにもかかわらず、後醍醐を京から追い出し、後醍醐とともに倒幕に協力した、楠正成や新田義貞ら仲間の多くを戦争で殺し、自分に都合のいい者を天皇に据え(光明天皇)、室町幕府を成立させてしまう。挙句邪魔になった実の弟や息子も戦争で殺し、幕府の安定化を図っていったのである。
この当時の話については、小説なのであくまでもエンターテイメントだが、吉川英二の「私本太平記」を読むととても入りやすいと思う。青空文庫でDLすれば無料で読めるので、ぜひご覧あれ。
後醍醐ポジがないって書いたけど、小池新政は成立後一年とかで間違いなく瓦解すると思うので、貫目は圧倒的に足りないけど、一応小池が後醍醐ポジといえる。
一方、北条高時は立場だけでなく圧倒的暗愚さから安倍ちゃん一択。他の人たちはいないかな。優柔不断なのに時々異様な決断をする足利尊氏ポジは前原? いや、尊氏はなんのかんので英雄成分が高すぎるし、戦に異様に強い……。*1
何よりはっきりしているのは、「大楠公」楠正成ポジはいないということである。楠正成は、あの時代の登場人物で唯一まともで、人を裏切らず、野心にギラつくこともない人物だった。おそらく日本史上初の本格的な山城での籠城戦を展開した智将でもある。
太平記の時代の中で、言ってみれば楠正成は一服の清涼剤なのだが、そのポジが一切見当たらないというのが、この政局がいかにクソかという事を物語る。
室町時代は南北朝動乱が収まった後、足利義満あたりの一時期だけ安定を保つが、その後は基本的にずっとあちこちで動乱みたいなことが起こる。そして、応仁の乱が起こり、明応の政変が起こり、幕府の権威が崩壊し、やがて戦国時代を迎えるのである。
室町時代がずっと混乱続きだったのは、幕府の権力構造がそれほど中央集権的でなかったこともさることながら、遠因として、室町幕府成立の過程であまりに既存の権威や道徳をないがしろにし、破壊しまくったため、室町幕府自体も安定した権威足り得なかった為だという見方もある。
政治は時代の空気に影響され、時代の空気もまた政治に影響される。
小泉政権、橋下旋風は日本人の品性をとことん落とした。民主党政権は日本人から政権は理性で選択するものだという考えを奪った。安倍政権は政治に条理や知性など不要であるということを日本人に徹底的に叩き込んだ。
その果てに、小池政権が生まれるのか?
政治に求められる品位から憲政の常道までとことん破壊しまくった日本。その後の日本はどうなってしまうのか? 小池政権がどうのこうのではなく、日本人にとっての政治が、一体どんなものに変わってしまうのか……?
後世の日本人が当世を見た時の表情は、薄ら笑いになるのか、恨みの形相になるのか、はてさてどうなるのか……。