この数日で、大きな裏切りと、大きな船出があった。
無論、希望の党の掲げた「排除の論理」と、排除された側の枝野の新党である立憲民主党の船出である。
希望の党 = 裏切りの党
前原の小池新党への合流話は、正直初めからきな臭いものを感じていた。自民党との最終的な連立は目に見えているし、都知事就任後の築地市場を巡るあれこれも、人を煙にまくだけ巻いて何をやりたいのかさっぱりわからず、「目的を持たないペテン師」といった風情の酷さばかりが目についていた。小池の側に吹く世評の風はあっても、「何か変えてくれそう」などの、なんの根拠もないものばかりである。砂漠に立つ蜃気楼だって、もっとまともに実態がある風に見えるのではなかろうかという中身の無さだ。
で、そこと前原が連携をくむという。相手は金もなければ地盤もない、ぽっと出の連中なのだから、しっかりと交渉して民進党にいいようにするのかと思いきや、なんと相手の言うように一方的に政策を飲め、仲間の中から排除される者が出ることも容認せよ、挙句金まで渡せというのである。
小池百合子。なんという強欲。なんという傲慢。
前原誠司、なんという無能。なんという力なさ。
大体、「リベラル派が排除された」との報道が盛んだが、民進党内で最も右寄りと言っても良い野田佳彦まで排除されているのだから、リベラルというくくりで放り出したのではないのではないか?
排除リストを見ると、いかにも党内の重鎮がずらりと並ぶ。どちらかと言うと、小池に意見しそうな「重たい」やつが選別され、放り出されていったというのが実情なのだろう。
※下記のうち、篠原と櫛渕は希望の党の一次公認候補となった。
- 菅直人 (東京18区)
- 野田佳彦 (千葉4区)
- 岡田克也 (三重3区)
- 赤松広隆 (愛知5区)
- 長妻昭 (東京7区)
- 枝野幸男 (埼玉5区)
- 安住淳 (宮城5区)
- 近藤昭一 (愛知3区)
- 辻元清美 (大阪10区)
- 阿部知子 (神奈川12区)
- 篠原孝 (長野1区)
- 初鹿明博 (東京16区)
- 海江田万里(東京1区)
- 手塚仁雄 (東京5区)
- 櫛渕万里 (東京23区)
方舟・立憲民主党の船出
一方、放り出された側は三々五々無所属での立候補となるのかと思われたが、枝野幸男がやってくれた。方舟・立憲民主党の船出である。
今日呼びかけたばかりである以上、立憲民主党の政策はいま急ピッチでまとめ上げているところだろうが、ウイングとしては、共産・社民と希望・公明・維新・自民の中間に収まる位置になるのであろう。政党の住み分けがはっきりしてきたという意味でも望ましいのではないだろうか?
それに何より、裏切られた側が三々五々散り散りで選挙をし、一人一人殺されていく姿を見届けるのはいくらなんでも忍びない。裏切り者ばかりがニヤニヤと勝利を噛みしめる姿を、政治の世界においてもう何度も見せつけられてきたのだ。
裏切られた者達の最後の方舟が、どこにたどり着けるのかは定かではない。それでも、世の中そんなに世知辛いことばかりではないと、少しは見せつけてほしい……だが、世の中そんなに甘くなかった。クズの集まりが、クズらしい振る舞いを見せるのは、当然のことだった。冒頭に掲げた希望の党の第一次公認候補の発表である。
一度裏切ったやつは、何度でも裏切りよる
上記はアウトレイジ ビヨンドの布施・花菱会会長のお言葉である。裏切りの党である希望の党にピッタリ当てはまる言葉だ。
希望の党は立憲民主党の枝野代表や菅元首相、長妻元厚労相などの選挙区には対抗馬を擁立した。一つの選挙区に複数の野党候補が立候補すると与党を利する可能性があるが、希望の党は立憲民主党との対決姿勢を見せている。
一方で、野田前首相や岡田元代表、安住元財務相など無所属で立候補する民進党の前議員の選挙区には候補者を立てていない。
関係者によると、民進党の前原代表は「無所属で出れば希望の党から対抗馬を立てないので立憲民主党には加わらないでほしい」と説得したということだが、それを裏付ける形になっている。
元同志に対抗馬を立てる。それも、選挙活動の金は、ある程度民進党の金庫から出ているのである。
そして、そもそも前原は枝野に対して、希望の党への合流話の立ち上げ時、こう言っていたのである。
ただ、この合流案を蹴ったとしても、民進党から離党者が続出するのは必至。残留した候補者の多くは当選が見込めない。同僚の多くが希望から出馬できるのなら仕方ないと考えた枝野氏は「邪魔はしない」と容認する姿勢を伝えた。前原氏は「そうじゃなくて協力してくれ」と頭を下げた。
協力してくれと頭を下げた相手に対し、対抗馬を立てて「邪魔」までしようというのである。こんなひどい裏切りがあろうか。
そもそも、希望の党は自民党に対抗する勢力を結集するという名目で立ち上がったはずなのだが、気がつけば立憲民主党潰しを始めている。
そして、小池自身が自民党との連立に含みをもたせた発言をするなど、たったの1週間で「自民党に対抗する勢力を結集する」というお題目が何処かに行ってしまっている有様なのである。
「一度裏切ったやつは、何度でも裏切りよる」
それは映画の中だけの話ではないし、テレビ画面の中だけの話でもない。我々有権者も、希望の党のような組織が大手を振るって国政を牛耳るようになった暁には、何度でも裏切られるようになるのである。
救済の方舟となるか?
結成されたばかりの立憲民主党だが、早くも北海道の民進党系候補は過半数が立憲民主党から出馬するという。
また、希望の党に公認申請したものであっても、立憲民主党に鞍替えしたいというのであれば排除しないということだ。正に方舟・立憲民主党である。
正直、最後発からの出発であり、候補者調整が極めて難航しそうなこと、リベラル派に支持が集まっているとはいえない状況であることから、正直立憲民主党は最も選挙で苦戦するのではなかろうかと感じるが、ここまで来たら、ひとりでも多くの者を方舟に乗せて出向し、勝利に導いてほしい。
裏切り者だけがほくそ笑む世の中なんて、これ以上見たくない。