ヘイト・クライムの誘発が、かくも鮮やかに行われるのかと、事件の一報を聞いてしばし嘆息した。先週の2/13、三浦瑠麗の下記発言があり、
で、2週間も経たぬうちにこの事件である。
あの日、フジテレビは千の丘自由ラジオとなった
直近では、北朝鮮からのミサイル発射などによる社会的な緊張が高まっているわけではない、この状況での朝鮮総連への銃撃。実際のきっかけがどうだったのであれ、この構図では三浦瑠麗の発言がいわば社会的な号砲となって発生した事件と見られても仕方がないのではないか?
まして事件を起こしたのは桂田智司だ。彼はもともと関西を中心に活動をしていた右翼活動家で、「全日本愛国者団体会議」に所属している。
また、彼は娘にも政治活動に参加させており、当時中学生の娘に、まさに大阪最大のコリアンタウンである鶴橋で、「鶴橋大虐殺を実行する」と宣言までさせているのである。
昔からヘイト・クライムを志向していた人間がそれなりの規模で存在し、マスメディアが心情的にお墨付きを与え、実行するものが出た。規模はもちろん比較にならないくらい小さいが、ルワンダ虐殺と同じ構図である。
ルワンダ虐殺を扇動した「千の丘自由ラジオ」は、最初はツチ族に対する警戒を呼びかけ(しかも、最初のうちは「ツチ族」という固有名詞すら用いずに)、徐々にヘイトスピーチの度合いを高め、やがて下記のような扇動をするようになった。
この構図における、今は「奴らに気をつけろ」と警戒を呼びかけていた初期段階にあたる。*1
もちろん、フジテレビや三浦瑠麗がこのような結果を望んだと断言できる確証はないが、事実同じ構図が発生したのである。
マスメディアや言論人に製造物責任はないのか?
製造業には、製造物責任法という法律が適応される。
Wikipediaによると、製造物責任の意義とは、下記のようなものである。
損害賠償責任を追及する場合、民法の不法行為法における一般原則によれば、要件の一つとして加害者に故意・過失があったことにつき被害者側が証明責任を負う。つまり民法で損害賠償を請求する際には、被告の過失を原告が立証する必要がある。しかし多くは、過失の証明が困難であるために損害賠償を得ることが不可能になる場合があるとの問題意識から、同法で製造者の過失を要件とせず、製造物に欠陥があったことを要件とすることにより、損害賠償責任を追及しやすくした。このことに製造物責任の意義がある。
故意、過失の証明などそもそも困難なものである。そのため、製造した結果に社会的責任を負わせる旨の法律である。
製造物責任法の対象は「製造または加工された動産」であるため、サービス、不動産、未加工のものは定義上含まれないとされる。したがって、マスメディア、言論人にとっての「製造物」といえる、放送内容や言論はこの対象には含まれない。
だが、普通に考えて、社会的な要請として、「製造または加工された動産」以外の物については、結果責任を一切問われることはない、などありえないはずである。仕事を通じ、社会に何らかの成果物を残している以上、その結果については組織、あるいは個人は何らかの責任を有しているはずである。
そういう意味において、事件との因果関係を立証することなどできないとはいえ、やはり本件に関連し、何らかの発言を行う必要があるのではないか? と自分は考える。
最低でも、ヘイト・クライムへの加担などありえない、ヘイト・スピーチに社会的価値、意義など認めないと、きちんと表明すべきである。また、そうでなければ、ヘイト・クライムへの加担を、沈黙の上で承認したと、社会が解釈してもやむを得ない、そういう状況がすでに出来上がっているのである。
ヘイト・クライムを志向する右翼が大量にいる
Twitter上で何度も可視化されているが、この日本にはヘイト・クライムを支持する人物、あるいは積極的に参加を表明している人物が、それなりの規模で可視化されている。中には有名人(まして、総理大臣の友人)も存在している。
断固支持します。 https://t.co/oM9w1g9X7Z
— 新社会運動 (@shinsyakaiundou) 2018年2月22日
「ヘイトクライム❗」とかいって騒いでるんだろうなぁ…。
— ワイルド🥊💥カズちゃん (@kaz630210) 2018年2月23日
敵国の出先機関なんだからこういう事が起こっても不思議では無い。
朝鮮総連に発砲 男2人を逮捕 https://t.co/cuiPYPsEBE
朝鮮総連本部に発砲、容疑で右翼活動家ら2人逮捕 警視庁 - 産経ニュース https://t.co/BRMUv2oCoK @Sankei_newsさん
— 三部技研・編集局 (@kokushinnkai358) 2018年2月23日
こういうの大好き。
これを切っ掛けにガンガン撃ち込まれると良いの。
もし北朝鮮のミサイルで私の家族が死に、私が生き残れば、私はテロ組織を作って、日本国内の敵を潰していく。
— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2017年4月13日
一兵卒として参加します
— 石井孝明 (@ishiitakaaki) 2017年4月13日
もし、私の家族が犠牲になるようなことがあれば、必ず復讐します。とりあえず総連、民団、民進党、社民党、共産党は第1ターゲットです。
— クロアゲハ (@kuroageha19) 2017年4月14日
簡単なところでは、駅前のパチンコ屋の打ちこわしですね。
「総連、民団、民進党、社民党、共産党は第1ターゲットです」に苦笑いを禁じ得ない。日本人のほうがたくさんターゲットになっている。ルワンダ虐殺では穏健派のフツ族も虐殺のターゲットとなった。そんなところまでルワンダ虐殺に似せなくても良いのに。
ヘイト・クライムを志向する人間の考えは、海を越えて似たようなものになるということか。であれば、ルワンダ虐殺の時と似たような構図でヘイト・クライムが発生した朝鮮総連への銃撃事件は、今後起こりうる更なる悲劇への予兆として、大いに警戒すべきではないか? そのように考えるものである。
*1:もし、桂田が「三浦瑠麗の発言を受けて」と動機について話し、三浦瑠麗発言と事件の関係性が完全に立証された場合、完全にマスメディア主導でヘイト・クライムが扇動された、戦後史上初めてのケースとなる。