朝日新聞の衝撃のスクープにより、国会は一気に急展開を迎えた。
はっきり言ってこれまで出てきた安倍政権のいろんな問題は、まあ言ってしまえば(少なくとも表面上は)総理大臣としての良識の問題であったり、政策に賛否があったりなどの問題でしかなかった。
だが、本件に関してはもうそんなレベルの問題ではない。まず、完全に犯罪である。そして何より、議会制民主主義を直接ぶっ殺す行為である。目の前で人が刺されているくらいの状況である。看過して良い問題ではない。
有印公文書偽造
今回問題として取り沙汰されている、森友文書の書き換えとは何か? 単純に言ってしまえば、交渉経緯なども含めて記された、森友学園への国有地売却の決裁文書が、決裁後に書き換えられていたというものである。
上記リンクに記載のとおり、「特例」などの文言が消えるなど、安倍政権のこれまでの説明と矛盾する部分を削除したりする内容で、時の政権を守るために、少なくとも財務省が、組織的に文書を改竄したと見られて当然の内容である。しかも、この文書は国会への提出資料である。つまり、形の上では、少なくとも財務省は、省庁を上げて日本人全員を騙したということになる。
そもそも、決裁印を押印した文書をあとから書き換えるのは犯罪だ。今回のケースであれば、有印公文書偽造ということになる。それは刑法第155条に記載されている。
第百五十五条
1 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2 公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
(虚偽公文書作成等)
上記2.に記載のとおり、本件は押印文書の変造に当たる。最長で懲役10年、最短でも1年の懲役がつく(罰金刑にならない)重罪である。国民全員の目の前で、堂々と犯罪行為が行われていたということだ。
安倍内閣の人間が本件に直接関わっていた確証は(今のところ)ないが、そんなものはあろうがなかろうが内閣の責任は免れない。というか、財務省がこんなものを出してきた以上、その財務省が中心になって組み立ててきた予算を審議できる理由などどこにもない。そんな信用のない組織に、どうして税金を預けられるというのか。この改竄に関わった人間とトップが責任を取るまで、予算の審議などありえない。
本件、3/2当日はまだ、朝日新聞が実物を手に入れているのかよくわからない感じだったので、正直「大丈夫かな? こんなカマシ入れて、もしフェイクだったり、あるいは実物を確認していたのだとしても、何かの形でハシゴ外されたら会社丸ごと死ぬぞ」とヒヤヒヤしていたが、なんかもう色んな人が「国会提出以外のバージョンもあるよね」みたいなことをアッサリ白状していて、どうやら改竄自体があったことは、もう既定の事実のようになっているのだ。
何と言っても野党の調査団と話した財務省の担当者も、思わずこんなポロリをしてしまうし。*1
もっと深刻な「民主主義の死」という問題
というか、犯罪がどうのとかいうよりもっと重大な問題がある。「国会に堂々と変造された文書が提出された」という事実である。
もはや国会に提出される各省庁の文書も簡単には信用出来ないということになる。提出された文書が変造されたものでないか、毎回検証しなければならない。当然、そんなことは手間がかかりすぎてできるはずがないし、そんなことで国会審議などできるはずがない。つまり、このままでは日本国にはもう国会など存在しないも同然なのである。
「民主主義は死んだ」
選挙で自民党が勝つたびに何処かのバカがTwitterとかで言う、信じられないほどバカな言葉である。
日本は議会制民主主義の国だ。政治に関わる全ての事は議会で決めている。国政であれば国会である。選挙など所詮議会の構成員を決めるためのプロセスにすぎない。こんな簡単なことさえ知らないバカが堂々と政治を語っているのである。
民主主義がそんなに大事なら、地元の議員(与野党問わず)にどんどん電話をかけ、議員事務所にも顔を出したりして話をし、民意というやつを伝えてくればいいのだ。仲間を集めて、デモでもなんでもやればいいのだ。それで議会を動かす。議員の考えや行動を変える。それが民主主義というやつだ。
この間の裁量労働制拡大の撤回でもそうだった。野党が頑張って裁量労働制拡大のインチキぶりを披露してくれた。それを拾った国民が強い拒否反応を見せた。たったそれだけで撤回したではないか。
安倍政権など、民意をちょっと見せればいくらでもコントロールできる。そう。議会が正常に機能していれば。
この森友文書改竄問題は、まさにこの「議会が正常に機能していれば」の機能の部分に止めを刺すような話なのだ。役人から出てくる文書がデタラメであれば、一体どうやって国会審議などできるというのか? 政府の仕事のチェックなど、初めからできないではないか?
「民主主義は死んだ」
どうしようもないバカしか喋らなかったこのセリフだが、本件の問題がスルーされるのなら、堂々と言うより他ない。民主主義は死んだ!! と。
森友学園問題のような、金額にすりゃあたかが8億かそこら程度の(いや、もちろん安いはずはないけど)、犯罪性すらない、言ってしまえば安倍晋三が国会で素直に「ゴメンナサイ」って言えば解決できるくらいの、本当に程度の低い下らない問題がきっかけで、犯罪であるばかりか、日本の民主主義の生死をかけた戦いが、安倍晋三とかいう無能なバカのせいで、本当に始まってしまったのだ!*2
安倍晋三みたいなマヌケ野郎は見たことがない!! もちろん彼が改竄を指示していたなどという事実は(まだ)ないわけだが、それにしたって役人に普段から忖度だの何だのやらせているうちに、結局こんなことになったのだ。マヌケ野郎と言うしかないだろう。
本件について自分は怒り以上に正直不安を感じている。本件の深刻さを、世間は理解できるだろうか? なんとなくでスルーされやしないだろうか?
モリカケは国会で散々やっていて、テレビでもバンバン取り上げられた。国民の多くがこの件について問題があると感じていて、問題の本質もそれなりにちゃんと理解されている。早い話が、安倍晋三が身内や「愛い奴」にお手盛りをしまくる、どうしようもない(そして典型的な)クソ政治家であるということが見える、分かりやすい話なのである。
だが、森友文書改竄問題は、問題の出発点である森友学園問題より遥かに重く、もっととんでもない問題であるが、その重さが分かりにくいのだ。何しろもはやこんな問題が出てきた以上、日本には国会が存在しないも同然の状態なのだ。クーデターに匹敵する事態だとすら言える。*3
だが、そんなことを世間の人に言っても「そんな大袈裟な」と笑われるだけのように思える。それが不安だ。
本件の問題、メディアでの取り上げ方は、結局ずっとレスリングのパワハラ問題の次くらいの重要度でシラーっと流される程度になるのではないか? それで、わけのわかっとらんテレビタレントのコメンテーターが森友学園問題本体と同じ程度の話として「いけませんねぇ」とか低調なトーンで語り、右寄りなコメンテーターが「そんなことより政策の方をやりませんか」とかわけの分からんことを言い、結局シラーっと「問題ない」「当たらない」みたいな話になるのではないか? そんな薄ぼんやりした不安が頭を過るのだ。*4
テレビも他のメディアも、もっと森友文書改竄問題をでっかく取り上げてほしい。森友学園問題はもちろん、安保法制や共謀罪よりも、遥かに重大かつ目下の問題なのに、その重大さが果たして伝わっているだろうか?
自分は、本件の重大性を伝えるべく、タイトルと同じ言葉でこのエントリーを締めようと思う。
森友文書改竄問題は、流石に日本の民主主義の生死がかかってるだろう。
*1:この担当者、あとで激ツメされたんだろうなぁ。可哀想に……。
*2:完全に偏見に基づく推測だが、多分安倍晋三自身は、そんなことになってしまっていることなど、全く認識できていないだろう。麻生太郎は、そこそこ認識できている気がする。菅や二階は当然認識しているはずだ。自民党の議員も大半は認識できているはずである。というか、自民党にしてみれば、自分たちが安倍政権を守るための根拠にしていた資料がウソだったということになったのだ。こんなありえない話、聞いたことが無い。
*3:軍隊を1つも動かさずに国会を完全に機能停止に追いやるとは、ある意味で安倍晋三は天才的な革命家である。これほど天才的な極左政治活動家は見たことがない。(手続きプロセスを破壊しまくるような人間を政治家と呼んで良いはずがない。安倍晋三は極左政治活動家だ)
*4:この問題のあとで「国会では政策論争をやろうよ」とかシラーっと言うやつがいたら、それこそ爆笑ものである。出てくるネタが事実かどうかもわからないのに、どうやって政策論争ができるというのか?