この記事はタイトル通り、下記コンセプトに従って、イーロン・マスクがTwitter社を買収したのち、Twitterに対して行ったことに関する各種ニュースサイト記事のリンクをまとめ、記事を読んだ俺自身の所感を述べるだけの記事である。この記事の目的の8割くらいは、俺自身の忘備が目的と言っても良い。
<記事まとめ対象>
- イーロン・マスクのTwitter社の経営や運営に関与する動向、およびそれらに直接関連して発生した経営や運営に影響する可能性のある事象を対象とする。
- イーロン・マスクがTwitterでだれに絡んだなど、Twitter社の経営や運営に直接関係のない動向は対象外。
- どこかのTwitterユーザーがイーロン・マスクに対して皮肉を言ったなど、イーロン・マスクの動向と直接関係のない事象は対象外。
このようにした方が、イーロン・マスクが今Twitterに対して何をもたらしているか、これからTwitterのサービスが止まってしまうのか、プレーンな形で判断材料として提示出来るであろうと考えたからだ。
因みに俺自身の日本時間2022/11/20 10:30時点での今後のTwitterの長期的な存続に対する予想だが、かなり絶望的だと考えている。その理由も記事の最後に記載する。
イーロン・マスクの動向まとめ
買収完了(10/27)
CEOにイーロン・マスク就任 取締役全員解任(11/1)
動画アプリVineの復活を指示(11/1)
大手企業が広告から撤退(11/3)
社員の半数に及ぶ3700人を解雇(11/4)
解雇された社員の一部に会社に戻るよう声掛け(11/7)
新Twitter Blueを正式公開(11/10)
リモートワーク禁止を社員向けに宣言(11/10)
上級幹部の辞任相次ぐ(11/10)
認証バッジが購入可能となった新Twitter Blueによりなりすましアカウント大量発生(11/10)
契約社員5500人中4400人を解雇(11/13)
自身のTwitterへの発言に反論した社員を解雇(11/14)
イーロン・マスクを社内Slackで批判した社員20人を解雇(11/16)
全社員向けに「会社を去るか長時間労働を受け入れるか」の選択を迫る最後通牒メールを送付(11/16)
最後通牒メールを受け、1200人の退職が発生(11/18)
一度慰留した広告幹部を解雇(11/18)
トランプ前大統領アカウントの凍結解除(11/20)
今Twitter社で起こっている事の自分なりの理解
シンプルに今起こっていることをまとめると、下記の点に集約される。
- 社員の大半が会社からいなくなった。契約社員も含めると13000人→3700人となった。実はすでに1000人程度しかいないのではないか? という情報も。(正確な社員数が最早分からない)
- 経営幹部の大半が解任或いは辞職した。その中には、最高プライバシー責任者、最高情報セキュリティ責任者、最高コンプライアンス責任者もいる。
- 認証バッジをめぐる混乱やヘイトスピーチ増加の懸念に伴い、Twitter社の売り上げの大半を占めている広告の撤退が相次いでいる。
- イーロン・マスク就任以降に実現したこと(宣言したことではなく)で、Twitterの本質的な価値を高める事に寄与したことは一切ない。
- 社員の解雇によって、見かけ上の経営状況は良くなったかもしれない。(広告収益が今後どれだけ落ち込むかによるが)
今後のTwitterの長期的な存続に対する予想について
当然ながら絶望的な見通しである。懸念されることが何点もあるが、大雑把にまとめると下記4点のリスクに集約されるであろう。
- 経営が行き詰まるリスク
- 法的問題となるリスク
- システムが停止するリスク
- 人材が払底するリスク
というか、上記4点はどれも会社を存続させるにあたって、経営者として真っ先にケアしなければならない箇所だとしか言いようがない。イーロン・マスクはカリスマ経営者と言われているが、むしろ経営リスクを高める天才なのではないだろうか?
経営が行き詰まるリスク
Twitterの収益構造は圧倒的に広告に依存している。実に90%近くが広告の売上で占められている。
そんな中、イーロン・マスクによるTwitter買収以降、すでに大手企業の広告撤退が相次いでいる。大手企業がなぜ次々とTwitterの広告から撤退をしているかというと、ヘイトスピーチとフェイクニュースがTwitter上にあふれ、そこに広告を掲載し続ける事による企業イメージ悪化を恐れているからである。
で、あるにも関わらず、ネットのフェイクニュースの首魁と言っても良いトランプ前大統領のアカウントの凍結解除までしてしまった。一般的な企業の基準に従えば、どう考えてもますます広告を掲載するのが難しいサイトになってしまったと言っていいだろう。
法的問題となるリスク
11/10に最高プライバシー責任者、最高情報セキュリティ責任者、最高コンプライアンス責任者が一晩のうちに相次いで辞任したことが全てを物語る。要するにこれらの幹部は、自分の責任範囲に関する法的な問題が発生するであろうことを確信したものと思われる。
米連邦取引委員会(FTC)は前述の3人の幹部の辞任に懸念を表明した。
関連する経営幹部の辞任、そして従業員数の急激すぎる縮小により、プライバシー、セキュリティ、コンプライアンスに関する、日々のシステムの維持や利益確保に直接寄与しない部分について、放棄されてしまうのではないかという懸念がある。
そして、政界もすでにFTCに対しTwitterを調査するよう圧力をかけている。
システムが停止するリスク
契約社員も含めて13000人いた会社がわずか3週間の間に1/3以下のサイズになる。これではどんな会社でも致命的な混乱があちこちで発生するのは自明のことである。Twitter社は当然ながら世界を代表するテック企業であり、そこで働いていたのはハイレベルな人材ばかりであり、それがいきなり2/3いなくなってしまった会社で、残った者だけでこれまで通りに回し続けるというのは無茶も良いところである。保守・運用が回らなくなるほか、バグやセキュリティ上の問題に対する対応も遅れに遅れるようになるだろう。
実際、解雇された従業員の中には、システムを運営するにあたり中核的な人材も多数含まれている。
Twitter Blue の認証機能プロジェクトを率いるデザイナーとエンジニアが辞任、重要な機能を管理していたインフラエンジニアも辞任。
イーロン・マスクが移行の要としてた運営チームからも何人か辞任。また、主要なインフラチーム全体が消滅!
デプロイ、Edge、SREチームも消滅。(デプロイチームがなくなったという事は、何かあっても何もリリースできないし、SREチームがいないで一体どうやって運用を回していくのか?)
「このチーム無しではTwitterを運営することはできません」と言わしめるチームが消滅。
Androidチームも何と全体が辞任!(俺もスマホで使っているAndroidアプリは、何か致命的な問題が発生してももう誰もメンテしてくれない)
解雇・辞職した社員やチームの代わりを雇えばよいという考えもあるかもしれないが、どんな仕事でもそうだがハイレベルな仕事であればあるほど、ある程度俗人化しているものである。特にTwitter社は、世界トップレベルで有名なテック企業なので、当然ハイレベルな仕事ばかりやっているので、辞めていったある個人にしか詳細が分かっていないようなノウハウもあったはずだ。もちろん、残っている人材もハイレベルなはずなので、そういう物をこれから残った少数のメンバーで拾い上げていくのかもしれないが、しばらくの間混乱が続くのは否めないであろう。
また、一連の解雇のタイミングがワールドカップの直前というのも非常にまずい。世界中でTwitterのアクセスが一気に上昇するタイミングである。
人材が払底するリスク
そもそもイーロン・マスクは一連の解雇の中において、スターリンばりと言っても良い粛清を従業員に対して繰り返した。自身の発言に対して技術的観点から反論した従業員を公然と解雇し、社内のSlackを監視して自身を批判した従業員を解雇し、「ハードコアな業務を受け入れるか辞職するか選べ」と踏み絵を迫るような異様なメールを送った。*1
これらの行為は、信賞必罰という考えからは程遠く、雇用や解雇といった重要な行為を単なるマウント行為として行っているにすぎず、また、イエスマンを周りに配置したがる、典型的なダメ経営者の行動とも言える。
スペースXやテスラに関してはイーロン・マスクは実質的な創業者であり、信者と言っても良いような従業員が集うからこそこういう振る舞いも許されてきたのかもしれないが、Twitterのようなすでに出来上がった会社の中でこういう振る舞いをする経営者のもとにハイレベルな人材が安定的にやってくるとは到底思えないし、居付くこともないだろう。
Twitterは何時止まるか?
Twitterがいつ止まるかは誰にも予想できない。今日明日いきなり動かなくなるかもしれないし、動き続けるがちょっとずつ挙動がおかしくなるのかもしれない。あるいはシステムは持ちこたえるものの、規制当局に差し押さえられて終了する可能性もある。金銭的な問題で動かせなくなる可能性もある。
ただ、そんなに遠くない将来(遅くとも2~3年くらいの間)のうちに、どこかの段階で止まるであろう。もちろん長年使っているサービスなので愛着もそれなりにあり、存続してくれた方がありがたいが、これまでに書いてきた内容からして、IT企業の経営をするうえで避けるべきリスクをすべて経営者自ら大急ぎで招いているような状態で、今後の長期的な存続については、【祈る】ならともかく、【予想する】のはとても理性的な態度とは言えないだろう。*2
まとめ
全てのものに終わりはある。当然Twitterにも終わりはある。とはいえ、こんな終わり方になるとは思ってもみなかった(まだもう少し終わらないが)。まして、2chの方がTwitterより長く存続するであろうとは、想像すらできなかった。人生は分からないことだらけである。
願わくば、この「想像すらできなかった」の想像がまた外れて頂ければありがたい。