雑記(主に政治や時事について)

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【棄民世代】いまだ漂流するネットカフェ難民

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下記エントリーに書いたとおり、2000年代前半の「超就職氷河期」に社会に出ることになった、30代後半の世代を自分は「棄民世代」と位置づけている。日本国政府と日本社会から棄民された世代ということである。

www.po-jama-people.info

 

その棄民世代について、最近のある調査によって、その悲惨な実態が改めて裏付けられた。1月26日に発表された、東京都による「住居喪失不安定終了者等の実態に関する調査」である。

www.standby-media.jp

 

 

棄民世代に未だ救いの手なく

ネットカフェ難民」という言葉を久しぶりに聞いた。今からちょうど10年位前、就職氷河期で職にあぶれた人たちが、低賃金のスポット派遣などでその日暮らしをするしかない状態が社会に蔓延していた。その中には、住むところも失った者もいた。

そうした人々はやがて、安住の地をネットカフェに求めた。住所不定である事実に変わりはないが、ネットカフェは一回あたりの利用料は安く、ドヤに見られるような負のオーラが染み付いておらず、屋根があり、空調があり、寝るところがあり、公園や橋の下で野宿をするよりずっと生存に適していた。そういう理由で住居代わりにネットカフェに住み着く彼らを、誰が言い出したでもなく「ネットカフェ難民」と呼ぶようになった。*1

「難民」という語は、この世代で最も漂流している彼らの実態を実によく表している。彼らは棄民されたのである。棄民されたからこそ、その一部は難民化し、ネットカフェという一時的なシェルターを求めたのである。

 

下記が実際の調査結果の概要だが、住居喪失者の割合が最も多いのが30代で、その次が50代であるということにショックを受ける。

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/01/26/documents/14_01.pdf

 

50代は一番リストラのターゲットにされやすい年代なので分からなくもない。それよりも、働き盛りの30代のほうがずっとネットカフェ難民の割合が多いということは、企業のリストラよりも10年以上前の就職氷河期が未だに生活に響いているということなのだ。

社会に出てから10年、もうおよそその世代の社会階層固定化され、動くということはないだろうことを考えると、棄民世代として日本社会に放逐された30代後半の人生が、いかに社会全体から壊されたかがよく分かる。

 

棄民世代 = 本当は必要だった世代

一方で、社会全体で「人手不足」という状況が広がっている。

www.j-cast.com

www3.nhk.or.jp

特に専門的な知識や技術を持つ正社員が不足しているという答えが目立っていて、人手が確保できないために休日出勤や長時間の残業が増え、従業員の負担が重くなっているとしています。(NHKニュースより引用)

 

就職氷河期のあの時代、今の棄民世代が最近の世代と同じくらい就職ができていたのなら、おそらく上記のような状況にはならなかったのだと思う。「専門的な知識や技術を持つ正社員」というのは、就職氷河期のあの時代に棄民世代を就職させていたのなら、育成できていたはずからだ。

だから、いまの時代に企業が人手不足で倒産したとしても、自分としては全然同情する気にはなれない。社会全体で棄民世代を産んだツケを、今支払っているところなのだ。

 

企業経営者は銀行に対して「晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる」と言う。我々棄民世代も全く同じように思う。

不景気のときに我々を棄てておいて、景気が良くなったらあの時みんな就職できた場合の我々を求める。だが、あの時我々を雇わなかったのは、今人手不足で苦しんでいる企業だし、あの時就職に喘いだ我々を救わなかったのは、小泉政権(2001年4月26日~2006年9月26日)と第一次安倍政権(2006年9月26日~2007年9月26日)だ。*2

 

こんな無責任な国家や企業が人手不足に苦しんだところで、一体何を同情すれば良いというのか。

*1:なお、この「ネットカフェ難民」という言葉について、ネットカフェの業界団体である「日本複合カフェ協会」は非常に奇妙な論理で批判している。下記のような論理である。

そもそも、「難民」とは『戦禍・政難を避けて流浪する亡命者』(「広辞苑」より)と定義されているように、国際社会における深刻な人権問題として位置づけられています。それを、一般社会と隔たりのあるケースにおいて「○○難民」と安易に定義づける傾向を私たちは危惧しています。

ネットカフェ難民」は人権問題ではないということなのだろうか? その後もごちゃごちゃ書いているが、全然前段と論理が接続されてない。要するに「汚い連中がたむろする場所と世間に見られたくない」ということが書いてあるにすぎないのだ

*2:小泉政権と安倍政権に一番責任があると自分が理由は、そこまでで就職氷河期収束からおよそ3年だからである。「第二新卒」という言葉がある通り、新卒後3年間程度はそれなりに企業の側にも新人として受け入れる余地が社会的にある。そのため、政治の後押しがあれば、世代まるごと完全に沈んだままにはならなかったであろうと推測している。